第160章

田中尚哉のこの出張は、最初から順調に終わるはずがなかった。

隣市のホテルに着いたばかり。長旅の疲れと埃をまとったスーツを脱ぐ間もなく、助手からの電話が――まるで死刑宣告のように鳴り響いた。

「田中社長、大変です!」助手の声は露骨に怯えている。「先ほど深澤さんが、書類を直接、社長の個人アドレスへファクス転送してきました。伝言もあって……24時間以内に署名しなければ、その書類を田中グループの取締役会の机の上に置く。それから……経済犯罪捜査大隊の投函口にも入れる、と」

田中尚哉は眉間に皺を刻み、ネクタイを乱暴に緩めながら、ホテル備え付けのデスクへと大股で向かいノートパソコンを開いた。

「…...

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